生活者のための家電ショー、生活者のための家電進化 ーIFA2019レポート4
2014年以来、5年ぶりのIFA。
前回来た時の衝撃は何よりもコンシューマーのためのコンシューマーデバイスショーだったということ。もちろん年末商戦をターゲットとしたトレードショーであり、ビジネスを第一に考えていることはあるのだが、土日を挟んで開催し、年配の方も、小さい子供連れも、中高生の集団もいる、CESとは大きく違った雰囲気が良い。
特に年配の方や乳児を連れたお父さん、お母さんと、家電メーカーの方が話している様子を垣間見ると、使う人のことを考えた商品開発に繋がっているのではないかと推察される。

ベビーカーに赤ちゃんを乗せて会場をまわるご家族

ある意味IFA名物と言える実演試食会には老若男女が集まる
日本にずっといると出会うことが少ない欧州メーカーがIFAの主役だ。
AEG、Miele、Siemens、Boschなど、日本の家電量販店ではあまりに見かけないメーカーが多い。そして、展示されている製品の多くは白物家電だ。洗濯機や食洗器などの洗浄を得意とするハードウェアが非常に存在感を出している。
所謂スマート化はコンテンツ視聴デバイスであるテレビなどの黒物家電から浸透していった。
CESでもSamsungの成長を牽引したテレビが家電の中心として存在していて、10年ほど前からスマートテレビが台頭し、今では当たり前になっている。
このコントラストは非常に興味深いものである。
エッジリッチが進む白物家電

殆どのメーカーで洗濯機や食洗器がずらっと並んで展示
生活の中にテクノロジーを浸透させていく上で、白物家電が提供する生活実態をイメージすることが非常に重要だ。
特に洗濯機、食洗器などの自動洗浄家電はコンシューマー向けロボティクス技術の最先端であり、これらは着実に進化している。
IFA2019レポート1で「エッジリッチ」というキーワードがあったが、デバイス側のインテリジェンス化が進み、デバイス単体で認識や判断ができるようになってきているのだが、それらに加えて、デバイスが実施すべきと判断したことを高いレベルで対応するセンサーやロボティックス技術が搭載されているのだ。
しつこい汚れを把握し、落ちるまで洗う食洗器

複数のメーカーが独自の強力洗浄機能をアピール
食洗器であれば、食器の汚れの状態を把握し、しつこいものであれば、そこを強力な洗浄機能で、汚れが落ちるまで洗う機能がある。
センサーやAIで汚れが判断できたとしても、洗浄機能も進化していなければ汚れを落とすことができないため、機能の中心である洗浄機能はより合理的に、そしてパワフルになっている。このような食洗器が普及すれば、予洗いはいらなくなるだろう。

強力な汚れもセンサーと進化した洗浄力で対応可能に
洗濯物を入れて乾かすまでがボタン一つで終わる洗濯機
洗濯機であれば、センサーがどのような素材が洗濯物の中に含まれているのかを自動で認識し、その素材に合わせた洗濯手段を実施する。そして殆どの機種が洗剤、柔軟剤を自動で計量し、投入する仕組みになっていた。
また欧州では乾燥機の利用が一般的であることから、乾燥機も欲しくなる機能が満載だ。
特に、まだ乾いていないのか、ちゃんと乾いたのかをセンシングする機能は、時間で乾燥をコントロールしていたことから解放される。これらによって、いちいち、衣類の洗濯タグを見て、コースを選んで洗剤や柔軟剤を調整し洗濯する必要が無くなり、乾燥したと思って触ってみたらまだ湿っぽくて、もう一度乾燥機を回すといったことも無くなる。
洗濯機と乾燥機が一体型であれば、洗濯物を入れて乾かすまでがボタン一つで終わるようになっている。しかもセンサーとAIによって、それぞれの衣類に最適化した形で。

素材を自動で判別する3DScanテクノロジー
こういったものが異常な湿度となる日本の夏に存在したらどうなるだろうか。
例えば、一人暮らしの社会人の自宅に普通に置かれるようになったら、日本の満員電車の中で生乾きの臭いが蔓延することが大きく減少するだろう。これはある意味、1つの社会問題の解決とも言える。
一人暮らしの社会人は、土日にまとめて洗濯するか、帰宅後ないしは日中、部屋干しすることが一般的だ。形状記憶シャツであれば、毎日クローゼットにしまわず、洗濯機から取り出して来て、脱いだ後、洗濯機に入れるというスタイルになるかもしれない。
洗濯機は乾燥機能だけでなく、クローゼット機能も提供するようになる。世の中へこういう提案をすることで、生活者の洗濯機の選び方も大きく変わるのではないだろうか。

素材の識別だけでなく乾燥しているかどうかも3DSCANセンサーで高精度に判定
当たり前になるコネクテッドと音声操作
一方、コネクテッドについてはどうかと言うと、こちらもハイエンドだけでなくHisenseのCandyのような普及モデルブランドでも対応するようになっていて、今後はどの機種でもコネクテッド対応が当たり前になりそうだ。
しかし、コネクテッドの用途については、まだまだ生活者目線でベネフィットが見えないものが多い。
洗濯のケースでもわかるように、一つの作業を効率化するアプローチはどんどん進むがそこにコネクテッドが必要かというと、スマホや指定したデバイスに残り時間を通知する、遠隔で操作するというものが大半で、あった方が良いというレベルのものから抜け出せていない。

Hisenseの普及モデルでもスマホで服を撮影すると最適な洗濯方法を設定する
ただし、これまでのスマホ接続のような取り組みは少しずつ効果を生み出しているという。
スマホで洗濯機の様子がわかるなんってことはできなくても良いと思われていた人も多いだろう。
しかし、こういった機能に慣れていくと、それができない他の機器が、不便に感じるようになるのだ。
その結果、客観的にはスマホとのコネクテッドは大した意味が無さそうな家電でもそれが当たり前になっていく。

トルコのBekoグループはHomeWhizという名称でコネクテッドサービスを展開
音声操作も同様で、こちらはさらに一般化し始めていると言える。
Samsungのスマートリモコンは、ボタンの数が非常に少なく、声で操作することが前提になっている。
細かいコントロールだけアナログ的に操作し、あとは声で良いという考えは非常にわかりやすい。

ボタンだらけだったテレビのリモコンも音声主体になるとシンプルに
重要なのはコネクテッドがもたらす利便性
5年後、10年後、どんな機能が家電のベーシックな機能になっているのだろうか。
今、見えていることとしては、ネットに繋がることが重要なのではなく、状態確認の際、場所を問わないこと、操作で悩まず、操作の手間が削減されること、この2つは大きく進み、一般化していくだろう。
そしてこれらをより快適にするためにコネクテッドが必要になる。現時点ではその実現手法が、スマホ連携やスマートスピーカー連携となる。この連携は新しい機能を使うということよりも、生活に無くてはならないハードの高機能化による利用の複雑化を解消するためのものと捉えるべきなのだろう。
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