闇雲なネット接続はなくなり、エッジリッチな進化を遂げる家電製品 ーIFA2019レポート1
今年もベルリンで、家電ショーIFA2019が開催されている。
展示されているものの中心は、いわゆる「家電」で冷蔵庫や掃除機、レンジ、といった白物家電が中心だ。
この3年を振り返ると、2017年がAlexa, Googe Home対応がメインで、様々な家電が音声応答システムと合体した展示が目を引いた。2018年は音声応答は必要なところに使われるようになり、それまでもあった傾向だがNetflixなどへの対応テレビや、Spotify対応ラジオなどの対応コンテンツプロバイダ数が増える、という傾向にあった。
また、こういったインターネットサービスを高解像度テレビでも使うために、スマートフォンで進化した小型、高性能プロセッサ製造技術がテレビ用にも活用され、「Co-Innovation」という考え方がうまれた。
正直、ベルリンに到着するまで、今年は、もうやることがないんじゃないか、とすら思っていた。しかし、実際は「原点回帰」とでも言おうか、家電は家電のやり方で進化するとでも言いたげな様相であった。
8Kを全面に出したテレビ

SUMSUNGブースの8Kテレビ

各社120インチ、8Kテレビを展示
テレビについては、音声応答や有機ELといった技術は当たり前となっていて、今年は8K対応の大型(120型)化が進み、テレビメーカーにおける展示の目玉となっていた。
また、コンテンツプロバイダとの提携も進んでいて、音声やコントローラーでサクサク動いているものがほとんどだった。
街中のSATURNという家電量販店でも、IFAの開催中だからかもしれないがHairやSumsungの8Kテレビが販売開始されていた。

家電量販店SATURNで販売されている8Kテレビ
4Kテレビが一般化していることも受けて、4Kとの映像の美しさを比較するような展示も多くみられた。
AIをエッジ側で取り入れるレンジ
レンジでは、油を使ったり、煮炊きする鍋の吹きこぼれが起きると問題が起きてしまう。そこで、ボッシュの展示では、それを認識して吹きこぼれなどが起きないよう自動調整するような仕組みが提案されていた。

BOSCHは、吹きこぼれを検知するセンサーと、火力を調整するAIエンジンを搭載したレンジを展示

このボタンを押すとで、レンジと鍋が繋がり、温度の調整処理を行うのだということだ。
よくできた仕組みではあるが、鍋自体もBOSCH製品出ないといけないので、外付けデバイスで実現できているとよいと感じた。
また、アイランドキッチンにおいて換気扇の設置が大変だからか、レンジの間に換気扇が付いている製品も多く展示されていた。

換気扇がレンジについていることで、省スペースを実現しようとしている
鮮度を保つ性能が高い冷蔵庫
冷蔵庫については、庫内の可視化と鮮度管理といった通知機能に関する機能が付加されるというトレンドがあったが、今年は以前からあった、庫内の温湿度を適切に管理することで野菜が長持ちする、というメッセージのものが多く展示されていた。

ボッシュのVitaFresh Proは、温湿度を計測、野菜なら湿度を高く、果物は低くと、適切な温湿度管理を行う。
他にも、環境問題を訴求する展示が多いことからも、環境配慮や食料の廃棄問題に根ざした解決策を提案していくというトレンドがあるのだと思われる。
部屋の隅々までキレイに掃除
以前から、ロボット掃除機は部屋の構造や状況を把握し、記憶することで隅々まで掃除をする、という機能が実現されていたが、同じ考え方でセンシングとロボティクスをうまく使ってキレイにすることができるという訴求を行なった展示があった。

窓拭きロボットは、窓の端っこの部分まできれいに拭き取ってくれる。
窓拭きロボットも、窓の端にくると端の部分に沿ってキレイにするというような動きをするようになっていて、これまでの単純な動きから窓拭きそのものに必要な動きが実現されるようになっている。
ヘルスケアテックも利用シーンを意識したものへ
電動歯ブラシやシェーバーについては、性能をうたう一方で、利用シーンを意識したものが展示されていた。
フィリップスの電動歯ブラシでは、コップに放り込むだけで充電ができるもや、シェーバーも台に置くだけで充電ができるという非接触充電技術を活用したものは以前からあった。

フィリップスの、グラスに立てるだけで充電できる充電器

置くだけで、非接触充電ができる
単に歯ブラシやシェーバーの性能を追うというだけでなく、周辺機器に工夫をすることで利用者のかゆいところに手が届くようにしていくという発想だ。
また、技術的なアドバンテージよりも、展示会で体験してよかったと思ったらうすぐにオーダーできる、という展示に切り替わっていたり、Amazon Dash Replenishment Serviceと連携して、歯ブラシ先がなくなりかけたら自動発注するような仕組みも整えられてきていて、より一層本体だけでなく周辺サービスを充実させる流れがでてきていると感じた。

フィリップスのオーダーコーナー
ところで、一時期話題となった、歯ブラシでの磨き残しがわかるスマートフォンアプリについて展示員に聞くと、「使っている人はそれほど多くない。しかし、歯科医師が歯磨きの指導をする際にはよく使われている」と述べ、デジタル技術の使い所についての考え方も興味深かった。

磨き残しの可視化は、利用者が使うというよりは、歯科医師の指導で使われているということだ。
さらに、洗面所という意味では、HISENSEが展示していた、インテリジェントミラーについても、参加者の注目を集めていた。

以前はタブレットPCが入っているだけだった、スマートミラーも、体組成計などと連携し、UIも工夫されたインテリジェントなものになっていた。
進化するワイヤレスイヤホン

すでに発売されているワイヤレスイヤホン。サイズや使い勝手が改善されていた。
iPhoneがワイヤレスイヤホンを標準として以来、急速にワイヤレスイヤホンの性能も向上したものがどんどん市場に投入されているが、SONYが今回展示した7月に日本でも発売開始されたワイヤレスイヤホンは、以前からあった音声応答可能なワイヤレスイヤホンの改良版で、以前のものよりサイズも小さく、操作をするためにタップをする場所についても反応が良くなっていた。
エッジでの細かなデジタル処理が主戦場に
こうやってみていくと、それぞれの分野で高性能センサーを活用し、必要に応じてエッジデバイス上でインテリジェントな処理を行う。その上でクラウドに接続するメリットがあれば接続し、より高度なサービスを行う、といったある意味あるべき姿に回帰し、発展してきているプロダクトが目立った展示会だと言える。
冷蔵庫の中身が画像認識でわかり、庫内のモノの保管状況を設定しておけばその後の管理もできる、といった、理論上できる(が実際はやらなさそうな)ことをイメージさせる展示が多かった数年前から考えると、かなり現実的なデジタル活用が進んできているなと感じた。
IoT/AIといって、派手なことはなにもないのだが、こういった生活者に寄り添った機能改善がすすんでいくことで、家電製品の買い替えの際の購買意欲を掻き立てるのだろう。
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