2017-11-16

米国注目のパワフルウーマンが指摘する顧客視点。Currency of Time(時間通貨)を意識し、データから“魔法の時間”を引き出せ

マーケターは競争に明け暮れすぎて、顧客のことを忘れてしまったんじゃない?
AIの時代にも一番大事なのはそこですよ!

―Joanna Pena-Bickley(Thnkmachineの共同創業者兼CEO。11月からAmazonのデザイン・IoT部門長。ad:tech Newyork、2017年11月1日)

私はホッケーのファンではなかったの。ファンでは見えないことが見えるからと、私が選ばれたのね。既存ファンを拡大しないと、集客増は望めなかったから。私がまずやったのは顧客を知ることね。
―Heidi Browning Pearson(NHL CMO。ad:tech Newyork、2017年11月1日)

11月1日・2日に開催されたad:tech Newyorkでは、女性マーケターの登壇が目立ち、初日のキーノートセッションでは、顧客視点について厳しく注意が喚起された。

デジタルマーケティングのベースとなるデータ量が従来以上に爆発的に増加し、顧客にリーチしやすくなった今、逆に顧客の事を皆忘れてしまっている―。そんな危機感に満ちたイベントだった。

「人(顧客)にフォーカスせよ」「業界がただ儲かる事ばかり考えていては先はない」というメッセージが全ステージを通じて顕著に内包されていたし、また直接発信された。そしてネクストステージはマーケティングの本質回帰から始まるというスタンスが明確に示された。

日本の広告業界も非常に近い課題を抱えている。そこで、本稿では米広告業界のデジタルマーケティングへのスタンスが垣間見れた1日目のキーノートスピーチ及びセッションの要約を紹介しよう。

1日目、キーノートを飾ったのは、Thnkmachineの共同創業者兼CEO、11月からAmazonのデザイン・IoT部門のトップに就任したJoanna Pena-Bickley。パワフルウーマンとして現在米国でも最もアツい注目を浴びている一人である。

 

多くのマーケターは、顧客の事を忘れている。Currency of Time(時間通貨)を意識せよ

 

Joanna Pena-Bickley。Amazon.comへの参画もこの日発表された

Joanna Pena-Bickleyスピーチ要約
AIは産業革命のようなもの。人間からすると、ロボットに自らの仕事を奪われてしまう恐怖があるわ。
歴史は同じことは繰り返さないけれども、そこからヒントは得られるでしょう?

今できることは、過去のケーススタディから未来を予測すること。
一つ言えるのは、ビジネスのやり方が今まで想像しなかった方法になるということね。

第一次産業革命はコーヒーショップで、当日のスペシャリストが集まって、より良い世界を実現するために何をすればいいか話し合うところから始まったわ。
第一次産業革命を動かした力の源泉があるけれど、例えばこれを現在起きていることと比較してみたらどうかしら?

コミュニケーションでは印刷技術、乗り物では蒸気機関車、エネルギーでは石炭。
今の時代に当てはめると、コミュニケーションはIoT、乗り物ではドローンと自動運転、エネルギーはデータと言えるわ。

この新しい産業革命の中で、正しいデータを取らなければ人のインサイトは導けないけれども、そこでよりIoTが大きな力を発揮する時代となっているということね。
そして、現在の世界中の歴史的課題を解消し、新たに人々を啓蒙する力がAIね。

私たちは今、Twitter やFBのポストに気を取られていて、この課題を解決するために、自身の時間をリフレーミングする必要があるわ。つまり、マーケターは多くのポストを投下するのではなく、顧客に適した時間を考えてターゲティングし、情報が届けられなければならない。

多くのマーケターは日々の競争に気を取られ、顧客のことを忘れているかもしれない。将来を考えて新しいビジネスモデルを構築する際には、顧客をベースに考えることは必要不可欠であることを忘れてはいけない。

世界には情報があふれ、時間がどんどん足りなくなってきている。2.5quintillionのデータが毎日生み出されている中、考えなければならないのは「Currency of Time(時間通貨)」という視点ね。

情報があふれても、人の好奇心はやむことがない。正しく取得したデータで人の好奇心を引き出す魔法の時間を、AIによって作り出すことが求められているわ。

顧客の時間通貨を考えよ!!との指摘に、オーディエンスからシャッター音が一気に上がった。

今後は、こうして、人々の生活をより良くするための解決策が生みだされる。ヘルスケア、旅行(モビリティ)と言った分野で、ビジネスモデルの再構築にも活かせる。そんな中、BAIDUを例にとっても、中国が世界のどこよりもAIサービス利用国であることは注目に値することね。

そして、マーケターに求められるのは「Extraordinary Human Creativity」―デザインの力、アイデアとその実行能力。体験デザインにさらに注力しなければならない時代であることを、強く意識しましょう。

——-
続いては、データ活用でスポーツ界をリードするNHL(北米ナショナルホッケーリーグ)から、CMOのHeidi Browning Pearson、元ニューヨークレンジャーズの選手で現解説者のPat LaFontaine、元選手で現NHLのVPであるKevin Westgarthが登壇。Heidiもまた、MyspaceやMaccanでの活躍を通し、度々表彰を受けている注目のパワフルウーマンである。

 

ジェネレーションZ世代は、NHLのフルゲームを見ない。マルチスクリーンでハイライトを見るだけで満足

 

NHLのCMO、Hidi。音楽業界への貢献で殿堂入りも果たしている。

NHLのデジタルトランスフォーメーションセッション要約
―100年も続くブランドを革新していく方法は?
Heidi Browning Pearson(NHL CMO、以下「H」):私はホッケーのファンではなかったの。ボードメンバーは、あえてファンでない人を望んでいた。ファンでは見えないことが見えるからと。既存ファンを拡大しないと、集客増は望めなかったから。ただ、私がまずやったのは顧客を知ることね。

チケットブースでのチケット購入データからオンラインまで、リアルとデジタルから集まったビッグデータを集約して、アプリのメッセージやチケットレコメンドを適正にするというところから始めたわ。エージェンシーを始めパートナー企業と共にね。

ソーシャルメディアにもフォーカスしたわ。特にGenZについてはソーシャルでのコミュニケーションが不可欠だから。スタディーグループを始めとした調査から得た結論は、若者は、フルゲームを見ないということね。マルチスクリーンでハイライトを見るだけで満足なのよ。

また、チームをサポートするというより、選手をサポートする傾向があるわ。NHLとしてはもともと選手よりチームをサポートする傾向があるので、このギャップは大きな挑戦となったわ。ホッケーの慣習では、目立つのが好ましくないとされているの。ただファンが求めていることを提供することは不可欠だから、トライすることにしたの。

Pat LaFontaine(以下、「P」):選手はスポットライトを浴びることになれてないんだよね。チームがスポットライトを浴びる。ホッケーは人間を育ててくれるものとされていて、コミュニティがとても強い感じなんだ。

それで、世界中のコミュニティが欲していることを考えて、コーチ、選手、レフリー、ファンと一緒に8つのプリンシパル(カウンシルメンバーのようなもの)を作った。

余談だけれども、昨年は、そこから3人をローマに派遣して、ローマ法王と一緒に集会をした。ローマ法王もアイスホッケーがプレーする人間に、チームワークやハードワークなど、大切なライフレッスンをくれるものと言ってくれた。これはNHLにとってとても良い機会だったし、こういったことも重要なんだ。

―オーディエンスディベロップメントについての戦略は、グローバル視点も含めどうなっているのかしら?
Kevin Westgarth(NHL VP):コミュニティへの参加を促すのがまず第一だね (participation aquicition) 。
そして学校でのカリキュラム化や3日間の集中合宿などを行っている。ホッケーに興味を持ってもらうこと、プレーヤーを増やすことが目的なんだ。
6日・200ドルで参加できるお手頃な体験プログラムもある。経済的な理由からプレーができない家庭の子供にも、ホッケーのプレー機会をもってもらえるようにね。

―データからどんな活性化を行っているの?
H:シングルファンIDを作ったわ。それをもとに、パーソナライズしたメッセージやパーソナライズした体験をできるようにカスタムしているの。勿論クラブごとにアプリがあったりするけれど、NHL側が統括する形をとっているわ。

——-
NHLのCMO・Heidiは現在、さらに顧客拡大を呼ぶための様々なテクノロジーに注目しており、上記の議論の後は、注目のベンチャー企業が続々とステージに登場し、そこにHeidiがコメントを加えていくというステージが展開されていた。

今の時代だからこそ重要な顧客視点とそのインサイトの取り方を話したJoanna、その具体例として示されたNHLのデジタル改革、そしてそこに新たなベンチャーの種が絡んでいく。
顧客視点から展開されたビジネスこそが、優良なベンチャーの苗床となり、お互いに刺激し合いながら、業界活性化につなげていくということだろう。

ad:tech Newyorkでパワフルウーマンが明確に提示した未来図。これは、日本市場においても同様と言えるのではないだろうか。

【関連URL】
時間通貨について
NHL派遣団とローマ法王訪問について

蛇足:僕はこう思ったッス

米国の現場ではAI、音声データ、IoTの活用がどんどん進んでいる。ドローンも含め規制とか日本に比べると全然ハードル低いんで、活用スピードが速いです。その一方で、デジマ業界で起こったアドフロードに類似した問題が、さらに悪化するんじゃないかって、皆さんとっても気にしているんですね。だからしつこいくらいに顧客視点を持て、人を大事にせよと言っていました。そしてそんな米国よりAI活用の進む中国。ニッポンの僕らはどう?ブレーキばっかり踏んでいるけれど。
記事提供元

TechWave(テックウェーブ) #WAVE
https://techwave.jp

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I▢TOP横浜とは、横浜市が2017年4月に立ち上げた横浜経済の強みである「ものづくり・IT産業の集積」を活かし、IoT等を活用したビジネス創出に向けた交流・連携、プロジェクト推進、人材育成等の場となる「IoTオープンイノベーション・パートナーズ」のことです。

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富士通コネクテッドテクノロジーズ

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